儀間朝龍とのおはなし

現在、熊本市現代美術館にて開催されている「GⅢ-86 祝CAMK10周年! 九州アート全員集合展」に出品しているアーティスト儀間朝龍に、作品やワークショップ、タイ・ベトナムでの滞在について伺いました。

聞き手: 大山健治
参加メンバー: 阪田清子、平良亜弥、宮城潤  (2012年 2月)

大山:水上店舗から浮島通りにギャラリーとアトリエを引っ越ししたきっかけは?

儀間:ちょうど1年前くらいに(2011年3月頃)ここの場所と出会いました。元々は洋裁店で、今いる場所(ギャラリー)は、昔は畳間でお琴教室とかやってて、おばちゃん一人で借りてたみたいなんですけど、大きすぎて結局まわんなくなったみたいで、長いこと閉めてたみたいです。僕は何年も前からこの場所面白いなと思ってたら、たまたま店の前を通ると、引っ越し作業してて、「もしかして!」って思って(笑)中に入って「出るんですか?」って聞いたら「出るよ」って。おばちゃんも「あんた借りたらいいさぁ」って軽いノリで言うから「え!じゃあ借りる!」って、もう、すぐ借りました(笑)。
で、まぁ最初はスペースを半分にしたとこをMIMURIが2011年5月にオープンして、僕はまだあっち(水上店舗)やってたし、展示会とかも決まってたからすぐに移動はできなかったので、残りの半分を僕のアトリエにここを使おうと思ってたんですけど、基本あっちにいる時間が長過ぎちゃって、ほんとに無駄に使われてて、もったいない状態が長いこと続いてました。
あっちでの展示会も2011年12月で一通り終わって。まぁ、鈴木さんの展示が終わる直前に、来年度の話になって、閉めようってなって。結果的にあそこでギャラリーとしてはほぼ2年間やってました。借りてからは4年間になるんですけどね。いい時間を過ごせたと思っています。幽霊もいたし(笑)。

大山:最初は水上店舗のスペースもアトリエだったよね?

儀間:最初はアトリエとして使っていたけど、倉庫にしてたところをギャラリーとしてオープンさせたんです。

大山:世界一・・・

儀間:(笑)そう、世界一・・・、でも把握できないから、那覇で一番ちいさなアートギャラリー(笑)

大山:水上店舗のほうでは何人くらいの展示をやったの?

儀間:14くらい展覧会とイベントやってたかな・・・。ちょっとうろ覚えですけど。まぁ、1ヶ月に1回を目標にしてて、でもやらない月もあったし。やっぱ2階がすごい暑かったりとかあったんで、8月9月はあんまり入れないようにしてたりとか。そういのはありましたね。決して毎月できた訳ではないし、逆に1ヶ月に2回とかあったりもしたんだけど。まぁ、ゆっくり。

儀間:あれが下積みとしてあったと思ってるんですが、ギャラリストのつもりはこれっぽちもないです。趣味に近いです。僕の周りの面白い作家もいるし、沖縄にはギャラリー少ないし、自分も含めて展示場所って多いほうがいいと思ってるから。それもあって、自分ができる範囲でっていうことでスタートしたのが前のスペースで、まぁ、今回この場所があって、新たに再オープンするっていうことに至ったときに、大きさどうすかっていうことになったときに「前があんだけ小っちゃかったんだからもうちょっと大きくしよう」って(笑)。あと自分のスペースも最低限確保することは大事にしました。

大山:ここで制作しながら、展示もしながら(って大変じゃない?)

儀間:普段は学校の先生をしながらなので忙しいですよ。まぁ無理しない程度に頑張ってます。

大山:point-1は、貸しではなく、企画で?

儀間:そうですね。貸してくれっていう話もよくあるんですけど、僕の個人的な関係も含めて紹介するから、今日会った人にじゃあ3万円でっていう、そんなことはしたくない。もっと余裕ができたら貸しギャラリーを作りたいなって思いますけど。お金払ってやるギャラリーも無くなっちゃうくらい、ギャラリーが沖縄ほんとに少ないからアーティストが育ちにくいなぁとは思います。自分も含めて、お金を払って自分が払った分取り返すくらいの気持ちでやれる環境が少なすぎる。誰かにやってとは言わないけど、少なすぎるなって思います。

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大山:そういえば、ベトナム、タイに行ってたんだよね?

儀間:そうなんですよ。2年前くらいに段ボールを水に浸すと、しばらくすると一枚一枚きれいに剥がれるっていうのを見つけちゃって。すごく簡単に紙ができたから。あの衝撃がすごくて。「SIMPLE PAPER MADE」って名前付けて、世界中でシェアしたいと思ってたので行ってきました。

大山:それって作業してるときに、たまたま見つけたの?

儀間:以前、市場の中にアトリエがあったから、毎日カラフルなカワイイ段ボールを見ていて。その前から廃素材で制作はしてたんですけど、段ボールをいつか使いたいなって思ってたんですけど、段ボールって固くて、もっと柔軟性があったらいいなぁって思ってて。剥がそうとするとときれいに剥がれないし。使いやすそうで使いにくいなぁって思ってました。そしたらある日、雨に濡れてる段ボール見たら、端っこからぺろんってはがれてて、「あれ!糊って水に溶けるんじゃないの?」って実験してみました。水に浸してしばらくしたらほんとに一枚一枚きれいに剥がれて、すごいびっくりして、「紙ができた!」って。まぁ再生紙でもなし、再利用に近いんですけど、簡単にかわいい紙ができて。僕はそれに個人的に感動しちゃって、それで制作したり絵を描いたりしてたんですけど、もうちょっと拡げられるんじゃないかなって思ってて。で、実験的にノートとか「できないかな、できないかな」みたいに勝手に考えてちょこちょこ作っていました。そのときはブランドとか考えてなかったけど、たまたまJICA沖縄さんの仕事でサモアという南太平洋の小さな島に連れてってもらって。そこで授業で段ボールのを使って授業とワークショップを行いました。このことは僕にとって、なんだかいきなりボーナスもらっちゃったと感じたので、今後も何か続けないといけないなと強く思いました。そして、帰ってきて半年くらい経って「rubodan (ルボダーン)」っていうブランドを立ち上げました。これはSIMPLE PAPER MADEの製法を伝えるだけじゃなくて、世界中でゴミを減らしながら商品を作って、役に立つモデルにしたいということでスタートさせました。

ベトナムに行った理由は、以前に知り合いが向こうの障害者の方たちがもの作りしている施設に行くというので、rubodanをお土産として持って行ってもらったんです。役に立ちそうなら是非使ってくださいって。ノートや封筒、ポストカードなど。そしたらしばらくして、「儀間くん、見てよ!むこうで作られたノート!」って、持ってきてくれて。「僕の知らない人たちが作ってるんだ!!」って考えたら嬉しくって。もう「行こう!」って決めました。そして、今年3月に行ったら、作ってるんですよ!ノートはハードカバーとか付いていて、僕が作ってたものとスタイル違うんですけど。で、むこうが疑問に思ってることとかもきっとあるだろうし、逆に僕ももしかしたら得られる部分もあるかもしれないと思ったし。お互いリンクしたほうが絶対得だと思ったんで。まずは行ってみようと思って行ったら、やっぱり「ここどうしたらいいの?」って問題点があって、その解決策を僕は持ってて、新しい技とか「こういうのあるよ~」って、いっぱい教えたらすごい喜んでくれて。でも、ほんとに時間がなくて、飛行機に乗り遅れるくらいギリギリまでいて、観光は一切できず、あと2日くらいいたらもうちょっとできたなぁって。ちょっと今回、時間が短すぎちゃってあんまできなかったんですけど、あとはネットでやり取りしながらやろうかなと思ってます。

ベトナムの後、タイのチェンマイに行ったんです。知り合いがいるんですけど、向こうでワークショップとかできないかなぁって話したら、バーンロムサイ(HIV孤児たちの支援団体)っていう映画「プール」のロケ地になってるゲストハウスがあって、そこで子どもたちが共同生活してて、一緒にノート作ったり、絵を描いてそれをプリントしてとか、自分たちで資金を稼ごうと頑張っているとこと、DOR DEKというとこの、2カ所でできるよってなって。

基本、ワークショップでは子どもたちに段ボールから紙が作れるよって教えました。紙がすごい高いみたいで、良い紙をあげても子どもたち失敗したらすぐにぐちゃぐちゃ~ってして捨てちゃうから、大人はもったいないって思ってたみたいで。そういう状況を結果的に現場で聞けたんですけど、簡単に段ボール水に浸してはがして紙ができるからすごいいいって思ってくれたみたいで。
あと、バーロムサイに関しては商品開発を具体的に考えてくれそうで。それが結果的売れたら、僕は資金的な援助は今はできないので、アイディアの援助で、それも売れてくれたら良いなぁって。そうい感じで協力できたらなぁって思って行ってきました。

大山:向こうではアーティストは地域と関わったりっていうのはあるの?

儀間:地域と関わってやっているアーティストっていうのは、多いと思うんですよね。そう思うのは、例えば、ギャラリーを持ったり、パーティーも開くのもそうですけど、自分の敷地内にスペース作って、作業して展示会したりする人もいますし。タイって日本よりアートのシーンってそんなに盛んではないと思うんですけど、少ないからこそみんな頑張ってる気がして、で、みんな「お金無い」って言うんですよ。無いけどみんなやってるんですよ。それって見習うべきだなって思うんですよ。僕、最初にタイに行ったときにアーティストのアンクリットさんとこに知人に紹介されて行ってきました。(*のちにpoint-1でも展示、現在はアーティストと、キュレーターなど幅広く活動。)3F建てのアパートみたいなスペースがあって、1Fでタイのライスヌードル屋でお昼過ぎまでそこで仕事をやりながら収入を得て、午後から2階にあるギャラリーを企画して、奥にあるスタジオで夜になったら製作をするっていうスタイル。最近は畑仕事もして米を作り始めています(笑)。そういう生活をしながら、家族もちゃんと面倒みていて、暇なく活動しているっていう姿見て、衝撃を受けたんですよ。その他にもいろんな人がいたんですけど、みんなできる範囲で何かやってて、「お金無いけど楽しいからやろう」っていうような雰囲気なんですよ、タイは。それやっぱすごい大事だなぁって思ったし、僕はまぁ、結果的自分では実践してると思うし、沖縄は東京よりできる環境だと思うから、やれる範囲でやっていきたいですね。「お金無いよー」って笑いながら。